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新型エクストレイルに搭載された可変圧縮比エンジン”VCターボ”を解説

新型エクストレイルに搭載された可変圧縮比のVCターボエンジン。そもそも圧縮比がバリアブルに可変すると、どんなイイことがあるんでしょう。エクストレイルが複雑な機構のエンジンを載せた理由を考えてみましょう。

更新日2022/08/03

圧縮比が変わる?そのメリットとは?

圧縮比とは、(気筒容積=ボア×ストローク+燃焼室容積)÷燃焼室容積で求められ、どれだけストロークで混合気が圧縮されるのかを表しています。エンジンスペック表に10:1などとあるアレです。

従来のNAエンジンでは、圧縮比が12:1、13:1などと高く、ショートストロークのほうがハイパワーとされていました。また、ターボエンジンでは圧縮比をNAエンジンよりも低く(例えば8:1とか)設定するのが常識でした(最近のF1のV6ターボは18:1などと高圧縮比ですが)。

高圧縮にするほど高効率ですが、温度上昇によりノッキングが発生するため、圧縮比には限界があります。

ところが燃費を良くするための希薄燃焼(ガソリンは少なく、空気はたくさん)の技術が進むと、ロングストローク+高圧縮比で薄い混合気でも、充分に圧縮すればクリーンにも燃やすこと可能になっています。

それでも圧縮比は固定されているので、効率には限界があります。要するに吸気の状態(負荷の状況)によって、理想的な圧縮比は変わるということです。

理想は、巡航時など吸気量が少ないときには圧縮比は高く、逆に加速時など吸気量が多いときには圧縮比は低くしたいのです。

その理由を簡単に言えば、そのほうが高効率で、普通は相反する低燃費とハイパワーを両立できるからなんです。

どうやって圧縮比を変化させるのか


圧縮比を可変するには、燃焼室容積か、ストローク側(ピストンとクランクシャフトの距離)を可変するのですが、VCターボではストローク側を可変させます。

やり方は、コンロッド大端部にマルチリンク機構を持たせて、リンクの端をアクチュエータで可動にすることで、ピストンとクランクシャフト間の距離(ピストンの上下位置)を変化させます。

これによってVCターボは、圧縮比を8:1から14:1の間で無段階に自在に変えることがきるようにしています。その変化は、ドライバーのアクセル操作に対応しています。

さらにVCターボには、マルチリンク機構(リンク式コンロッドを含む)を採用することで他にメリットも生まれています。

ピストンが上下するとき、アッパーリンク(通常にコンロッドに当たります)の角度変化が小さく、より直立したままスムーズに下降するので、シリンダーとの摩擦(側圧)を低減します。

これは、フリクションロスが低減するので、燃費が向上します。また、通常のピストンは上死点側と下死点側でピストン速度が異なりますが、VCターボでは上下対称となり、振動を抑制することができます。

さらに高効率ワイドレンジターボを採用し、電動ウェイストゲートで過給圧を細やかにコントロールします。これによりターボラグを抑えて高効率に過給し、瞬時に大出力を発生させることができるのです。

また、低負荷時には電動VTC(可変バルブタイミング機構)によりバルブタイミングを連続的に変化させ、ポンピングロスを低減。高圧縮比(=高い熱効率)と組み合わせることで低燃費を実現しています。

可変圧縮比をものにした日産


じつは、エンジンの圧縮比を可変させるアイディアは、けっこう古く1920年代からありましたが、量産にいたることはありませんでした。

そんななか、1999年にはヤマハ発動機が燃焼室形状を可変させ圧縮比を変える2ストロークディーゼルエンジンを発表したり、2000年代初頭には、サーブがこれの燃焼室容積を可変させるエンジンを研究しています。

日産は、1998年からVCターボの研究を開始。2016年に実用化に成功し、2018年に量産車として世界で初めて可変圧縮比エンジンをインフィニティ「QX50」に搭載しました。

この2.0L直列4気筒DOHC16バルブターボエンジンは、最高出力200kW(272ps)、最大トルク390Nmを発生し、6気筒ガソリンエンジン並みのパフォーマンスと、それ以上の効率性を実現するとアナウンスされました。

この2.0L直列4気筒DOHC16バルブターボに続き、2022年モデルの「ローグ」では、ダウンサイジングされた1.5L直列3気筒DOHC12バルブターボとなり、新型エクストレイルのe-POWERにも採用されました。

これにより新型エクストレイルのe-POWERは、これまでよりも圧倒的な静粛性と、高い燃費性能をを獲得しています。このように日産のVCターボは、賢く“可変”を利用し、高効率で低燃費&高出力を実現したエンジンです。今後、どんなクルマに搭載されるのかも、ファンとしては楽しみですね。

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文・SUV FREAKS編集部

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