【SUVだからこその絶景】静かな森では、モーター駆動のミニ クロスオーバーPHEVがモノを言う

10年と少し前あたりから、次第にはっきりと浮き彫りになってきたSUVカテゴリーの盛り上がりのなかで、それまでは思いも寄らなかったようなクルマのSUVヴァージョンというのがいくつか誕生してきました。その代表選手の1台が、ミニ クロスオーバーです。

更新日2019/08/19

TEXT:嶋田智之(Shimada Tomoyuki)、 PHOTO:山田真人(Yamada Makoto)、
MODEL:桜田 莉奈(Rina Sakurada)

“ミニ”の歴史は1959年まで遡ります。初代ミニは経済的な4人乗りの小型車として真面目に開発された、英国生まれのミニマルな大衆車としてデビューしました。

が、そのスタイリングがどこか人懐っこく愛らしいこと、それに設計が極めて巧みで走らせてみると意外なほどスポーティ、とりわけ“ゴーカートのよう”と評されたキビキビ感満点のハンドリングが他に類を見ない楽しさを感じさせてくれることなどが大いにウケて、ファミリーカーとしてはもちろんのこと、若者達の元気のいいライフスタイルの相棒としても大人気となりました。

2000年に生産が終わるまでのあいだに、世界中で530万台が販売された、自動車史に残る名車なのです。

現在のミニは、人懐っこいルックス、キビキビした楽しい走りっぷりといった、偉大なる初代ミニの持つキャラクターを受け継ぐ現代版として、ミニブランドを傘下に収めたBMWグループが開発して2001年に世に送り出した新世代です。

はじめのうち、初代は“クラシック・ミニ”、新世代は“ニュー・ミニ”と呼び分けられましたが、クラシック・ミニの持っていた明るく楽しい世界観を漂わせるさまざまなヴァリエーションを展開ながら、いまではニュー・ミニも3代目。もはや単に“ミニ”といえば現行モデルを指し示すのが当たり前、となっています。

ミニ クロスオーバーは2代目の時代、2008年にコンセプトが発表され、2010年に正式にデビューを果たしました。

ミニの車体を全体的にひとまわり大きくした、ミニの歴史のなかで初めて後席ドアが与えられたモデルです。同じくミニ初の4WDシステムを持つグレードが設けられたり、広々とした座席周りやカーゴスペースが与えられたりと、休日にアウトドアを楽しむのにも適したクルマに仕立てられていました。

その車体の大きさから“もはやミニじゃない”と揶揄する声もありましたが、逆に家族全員がくつろぎながら移動できる快適さやクルマの内外に散りばめられた遊び心などから、ミニ一族のなかでもっともファミリーユースに適したモデルと評する声も大きかったのです。

2013年からの3代目となる現行版にも、もちろんクロスオーバーはラインナップされています。しかも2017年には、プラグイン・ハイブリッド・モデルが追加されています。その“ミニ クーパーS E クロスオーバー ALL4”を連れ出してみることにしました。

車名にある“クーパーS”とは、ミニの高性能版であることを示します。

“E”は電気モーターを備えるクルマ、このモデルの場合にはPHEV(=プラグイン・ハイブリッド)であることを意味します。そして“ALL4”とはミニ独自の名称で、4WDモデルであることを表しています。

つまりフロントのエンジンフードの下に搭載されている100kW(136ps)/220Nmの1.5L直列3気筒ターボエンジンで前輪を、65kW(88ps)/165Nmのモーターで後輪を駆動する仕組みを持っており、システム合計では165kW(224ps)/385Nmと、ラインナップ中もっともスポーティなジョン・クーパー・ワークスに匹敵する数値を誇ります。

後席の下に収まるリチウムイオンバッテリーは、もちろん他のハイブリッドカーや電気自動車と同じように、走行中の回生システムの働きで充電することもできますが、プラグイン式ですから200Vの電源を使えば空の状態からおよそ3時間で満充電にすることも可能。

JC08モードでの燃費の数値は17.3km/Lですが、電気モーターのみで最大で42.4kmの走行が可能ですから、日常的なちょっとした買い物や近場までの往復ぐらいならガソリンをまったく使わずに済ませることもできる、というわけです。

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ちなみにこのクルマには、eDRIVEと呼ばれるハイブリッドシステム側のモード切り替えと、いわゆるドライブモードの切り替えというふたつのモード切り替えが備わっています。

それを駆使すれば、たとえばeDRIVEを“MAX eDRIVE”、ドライブモーを“GREEN(=エコ)”にすれば、バッテリーの残量を抑えたり充電量を増やしたりしながら、できる限り電気自動車として使うことが可能だったり、eDRIVEを“AUTO eDRIVE”、ドライブモードを“SPORT”にすれば、エンジンとモーター両方のパワーとトルクを使った強力な加速を得ることが可能、といった具合です。

つまり、クルマの持ち味を気分や走行条件に合わせて、効果的に使い分けることができるのです。

もちろんeDRIVEを“AUTO eDRIVE”に、ドライブモードを“MID(=標準)”にしたまま一切の面倒なしに走っても、ハイブリッドカーとしてのメリットを充分に享受することはできるわけですが、自分で考えつつモードをあれこれ切り替えて最大の効果を狙って走るのには知的な面白さもあって、ドライブそのものの楽しみも広がります。

さて今回のテーマは、森に分け入ってハンモック、です。東京を離れ、緑豊かな山間の村にある渓流沿いの森を目指しました。

ミニ クロスオーバーのサイズは、全長4,315mm×全幅1,820mm×全高1,595mm。ホイールベースは2,670mm。確かに“ミニ”というほど小さくはありませんが、そのぶん室内は大人4人には充分な空間がありますし、荷室容量は通常405L、後席をたためば1,275Lと、たっぷり実用的です。

今回は森の木々に両端を括りつけて吊すものを持ち込んだので、後席をそのままにポンと荷室に放り込めばOKという感じでしたが、4:2:4の分割可倒式の片側ひとつを倒せば、自立スタンド式のものを数人分運ぶこともできそうです。

それなりの大きさがあってハイブリッドシステムを搭載してもいるわけですから、車重は1,770kgと決して軽くはないのですが、街中でも高速道路でも、鈍重さを感じることはありませんでした。

電気モーターだけで走っても後輪に165Nmのトルクがかかるわけですから、街中では充分、高速道路でも巡航に入ってしまえばじれったさもありません。

モードをAUTO eDRIVEとMIDの組み合わせにすれば、なにも気にせずに気持ちよく走れますし、ドライブモードをSPORTにすれば、右側の車線を元気よく飛んでいくことだって楽々です。

そうしたときの乗り味は、低い位置にバッテリーなどを搭載することで、通常のミニ クロスオーバーと較べて重心高が低くなっているぶんだけ腰の据わった印象で、ふかふかした心地の良さとは異なるたぐいの落ち着いた心地好さです。

山間を目指してワインディングロードに入ると、ハイブリッドカーのひとつのメリットがさらに喜ばしいものに感じられます。後輪にかかるモーターのトルク。それが前輪にかかるエンジンのパワーを文字どおり後押しして、コーナーから力強く立ち上がっていくのです。

ちょっとしたスポーツドライブを試みても、力不足というものを感じることがありません。意外や俊足。それにミニならではのハンドリングの良さ、それに重心高の低さが、こうした場面で強く活きてきます。

さすがに車重もそれなりなので、ゴーカートフィーリングとまではいきませんが、それでもステアリング操作に対して車体は遅れなしに素直に向きを変え、コーナーを素早く気持ちよくクリアしていってくれるのです。

そのときの絶妙なフィーリングは、ミニ クロスオーバーのなかでもこのモデルでしか味わえない気持ちよさ。SUVではありますが、走る楽しさ、気持ちよさにはちゃんと重きが置かれている、というわけですね。

といって、元気よく走ってばかりいるわけにはいきません。下り道では極力、回生システムを最大限に活かして電気を取り戻し、充電の残量を稼ぐようなドライブを試みました。

途中のぬかるんだ登り道では、AUTO eDRIVE に切り替えて4WDシステムの威力を借りることもありましたが、それ以外はMAX eDRIVEにして電気自動車の状態で進みました。なるべくエンジンの音で森の住人である動物達を驚かせたくなかったのです。


小さいけれどユーティリティ性が高い、MINI クロスオーバー

実際にはタイヤが路面を踏みしめる音や大きなモノが動く気配もあるわけで、まぁ明らかに自己満足の範疇なのかも知れませんが、それでも森をひとときだけ楽しませてもらう侵入者としての礼儀、のつもりでした。

そうして到着した、小さな渓流のそばの小さな森のなかの空間にハンモックを張ってスポッと収まると、なんとまぁ心地好いこと。柔らかい空気。木々の香り。少し遠くに聞こえる森の住人の気配、すぐそばの流れの鈴より美しい音。大自然が与えてくれる豊潤に、優しく包まれていくような…。癒やしというのは、こういうことをいうのですね。

クルマで楽しく走るエキサイトメントに、こうした場所が与えてくれるリラクゼーション。その両方をなにひとつ無理なく気持ちよく楽しめるというのは、とても幸せなことだと思うのです。

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